平成15年度・16年度 文部科学省・和歌山県教育委員会研究指定

『国語力向上モデル事業』研究発表ダイジェスト

すべての教育活動の中で
国語力向上を図る取組

1 本校の概要

  本校のある橋本市は、和歌山県北東部に位置し、古くは大和人にとって紀伊の国の玄関口、高野山へ参拝する人々の宿場町としてにぎわいを見せた歴史的なところである。本校は、生徒数183名、7学級の学校で、保護者や地域の人々は教育への関心が高く、学校教育に対しても協力的である。

  平成15年度・16年度に文部科学省・和歌山県教育委員会の研究指定『国語力向上モデル事業』を受け、「確かな学力」を育成するために、国語科を中心としたすべての教育活動の中で、国語力向上を図る研究に取り組んできた。

2 研究の背景と出発点

  明朗活発で誠実な生徒たちは、緑豊かで自然に恵まれた地域で生活している。しかし、地域が都市型へ変貌するとともに、家庭では情報機器が普及し、それに伴って、親子の対話や団らんの時間が減ってきているように思われる。また、生徒たちは、相手・目的・場面に応じた話し方・聞き方など、社会生活や人間関係の構築に必要な言語運用能力が未熟であるようにも感じられる。さらに、自分の考えや意見を人前で発表する機会が少なくなるなど、コミュニケーション能力にも課題があると考えられる。

  『国語力向上モデル事業』は、中学校区3校(学文路小・清水小・本校)連携によるものである。そこで、3校は国語科の領域「話すこと・聞くこと」を中心に、9年間を見通した研究を進めることにした。

  本校では、最初に生徒の意識実態調査を実施し、生徒のコミュニケーションセンスを積極性・共感性・柔軟性の3つの方向から分析することで問題点の明確化を図った。次いで、研究の軸となる『国語科年間指導計画』の見直しを行い、国語科の中での「系統性」や、国語科と他教科・領域等との「関連性」を探ることにした。

3 研究の実際

 (1) 研究主題

   『一人ひとりを生かす指導の在り方』

    ― 自ら学び、自ら考え、伝え合う力をいかに高めるか ―

   生徒一人ひとりの人間形成を図りながら、「国語科を中心とした教科等で育成する国語力」と「教科等で言語を運用する国語力」との両面を関連付けながら個々の国語力を育成する研究を進めていこうと考えた。具体的には、生徒一人ひとりに「学ぶ楽しさ」や「知る喜び」を体得させ、心豊かに生き生きと活動させることを目的として、国語力を向上させるために、授業の工夫改善を進める。また、「話すこと・聞くこと」を中心とした言語環境の改善を図り、「伝え合う力」を高めさせることを目指すこととした。

(2)      
研究仮説

【仮説1】 『国語科を中心とした教科等において、自己形成に関わる「確かな学力」

を身に付けさせるための授業の工夫改善を図ることによって、生徒一人ひと

りの国語力は向上するのではないか?』

   学習指導要領が示す指導内容を育成しながら、国語科を中心とした教科等を指導する過程で確かな学力を身に付けさせる。このことが、直接的・間接的に国語力の中核を成す力としての「考える力・感じる力・想像する力・表す力」や、その基盤となる資質等の「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」の育成につながるのではないかと考えた。

【仮説2】 『生徒一人ひとりが身に付けた国語力を授業の中で生かし、言語を運用さ

せる場を設定することで、生徒一人ひとりの国語力はさらに向上するのでは

ないか?』

   人間関係の構築やより豊かな生活を送るために「言葉」は大切である。学習指導要領総説「生徒の言語活動の適正化」に示されているように、音声言語を運用する場を、学校生活全体の中で計画的・意図的に数多く設定することにより、双方向のコミュニケーション能力の基盤となる「話す力・聞く力」を高めることができるのではないかと考えた。さらに、「意見を述べる・要約する・質問する・説明する」場を設定することで、より一層「伝え合う力」を高めることができるのではないかと考えた。

 (3) 特徴的な取組

   3校が連携して研究を進めていく「研究の軸」として、国語科の「話すこと・聞くこと」領域に関する9年間の『指導目標系統表』を作成した。これを研究の縦軸として、さらに、研究の横軸として系統表を具体化させた『スキル表』を作成した。この表は、指導者の指導内容、生徒の到達目標を示し、また、評価に生かす目的で教室に掲示している。

   さらに、その『スキル表』をすべての学習活動に生かすことを考えた。知識や技能を体得し、個人の教養・価値観・感性等を高めていく様々な学習活動の中で「生きる力」を培いながら、指導者が『スキル表』を活用した授業改善や工夫を行い、「生きる力としての国語力」を育成することを目指してきた。

 次に、その特徴的な取組を3つ紹介したい。

@ すべての教科・領域等で生徒の「話す力・聞く力」を育成する

   「国語力の育成と言えば国語科で」と思われがちである。もしそうだと仮定すれば、国語科は週に3(4)時間しかないことになる。本校のように、国語科だけでなく、すべての教科・領域等で「話す・聞く」場を設定することにより、全時間で「話す力・聞く力」を育成することが可能になる。そして、国語科以外の授業では、学習指導案の中に「国語力向上との関連」という指導のねらいを明記し、1単元1時間ごとに、各指導者が検討した「話す力・聞く力」を育む場を盛り込んでいる。この1時間1時間の積み重ねこそが「言葉の力としての国語力」の向上につながっている。

<授業の中で発表し合う生徒たち>

A 「総合的な学習の時間」の中で実践的コミュニケーション能力を育成する

    「発信・受信」から「交信」への静的なものだけでなく、集団の中で個人の動的な伝え合う力を高めることをねらいとして、生徒の実態に応じながら、国語科における言語活動例の対話や討論を積極的に取り入れてきた。通常は、学級や学年で行うが、生徒たちが興味・関心のある話題について、時には保育園や小学校、地域のボランティアの人々と交流しながら実践的コミュニケーション能力を育む場を設定している。

B 国語力の基礎学習として「朝の会」の時間を活用する

    「基礎学力・読書タイム・漢字学習」の3種類を、毎朝10分間継続して実施している。国語力向上のための基礎学習の時間として位置づけ、言葉への興味・関心を高め、読書活動を推進しながら、語彙力や読書する力を向上させる場として設定している。

<熱心に朗読する生徒たち>

4 研究の成果と今後の課題

(1) 研究の成果

    指導者が国語力向上を意識した授業改善や工夫を行うことで、『学習環境の質的改善』や『言語環境の改善』がなされた。「話す力・聞く力」を育成する生徒主体型の授業を展開することにより、生徒一人ひとりのコミュニケーション能力が向上してきた。このことが『伝え合う言語環境』をつくり、以前より幅広い人間関係の構築につながったと考えられる。

   たとえば、人前で話すことが苦手であった生徒が堂々と声を出したり、目的や場面に応じて話すようになってきた。また、話の要点を事実と意見とに聞き分けたり、話し手にうなずきや相づちを示している生徒が増えてきた。さらに、自分の考えや思いを一生懸命に自分の言葉で説明したり、相手のことを察しながら対話や討論したり、話の疑問点に対して「なぜ」と「なに」を区別しながら質問できるようになってきた。

   また、『スキル表』の活用は、「話すこと・聞くこと」の実践活動を通じて、個に応じた効果的な指導や支援を行うことに役立っている。

さらに、「話すこと・聞くこと」を実践する場には、「話し手・聞き手」という個と個を結ぶより良い人間関係が必要である。「伝え合う力」が集団をつくり、また、よき集団があるからこそコミュニケーション能力をより一層向上させていくと考えられる。その『集団づくり』にも力を注ぎ、伝え合う力を高めるために、互いの考えや立場を尊重する態度を育てることが重要である。このことによって、生徒の「豊かな人間性」を育成することにつながっていると考えている。総じて、すべての教育活動の中で国語力向上を図る取り組みは、生徒一人ひとりの「生きる力」を培うことにつながっていると考えている。

<スキル表を使っての授業風景>

(2) 今後の課題

    国語力向上の研究は、進めれば進めるほど内容が奥深く感じられてくる。試行錯誤を繰り返してきた2年間であったが、国語力は、これからの時代を生き抜いていくうえで本当に大切な力であると考えられる。

@        国語力は、学校だけで身に付き、向上する力ではない。家庭や地域と連携しながら取り組みを行ってこそ効果が上がると考えられる。そのためにも、学校で取り組む内容や生徒たちの実態を家庭や地域に発信し、また、家庭や地域から情報を受信しながら、「研究の交信」を行う。

A        課題の中から新たな仮説を立て、検証を繰り返していくことにより、生徒一人ひとりの「生きる力としての国語力」や「言葉の力としての国語力」を向上させる。

B        指導者は国語に関する意識を高め、国語指導力を向上させるための研修等をより一層充実させる。

 

最後に、『国語力向上モデル事業』を通して、私たちは「国語力」の重要性を認識することができた。今後も、生徒たちに「国語のシャワー」を浴びせ続けることが責務であり、国語教育と読書活動を一層推進し、更なる日々の指導の改善につなげていくきっかけにしたい。

【主な研究経過について】

[平成15年度]

 04・25(金)第1回国語力向上研修会

05・02(金)公開授業[7クラス]

 05・20(火)生徒意識実態調査[コミュニケーションセンスチェック(全学年)]

 06・09 () 第1回和歌山県国語教育推進協議会

 06・24(火)前期学校訪問[研究授業(1年英語科)・研究協議]

 08・28(木)橋本市教育フォーラム発表分科会発表

 10・15(水)伊都地方人権教育研究大会分科会発表

 10・30(木)〜31(金)文部科学省教育課程研究協議会【国語科】

         「国語科年間指導計画」作成について提案発表

 11・04(火)後期学校訪問[研究授業(1年国語科)・研究協議]

 12・03(水)3校合同研修会[松丸春生先生講演(国語の4つの領域)]

01・21(水)中間報告書提出

 01・26(月)第2回和歌山県国語教育推進協議会

 03・10(水) 「『言葉』について考える体験事業」(文化庁)開催

[工藤直子先生「読みっこ大会」]

03・12(金)保護者対象実態調査[1・2学年]

[平成16年度]

 04・20(火)第2回国語力向上研修会

 05・17(月)第1回和歌山県国語教育推進協議会

06・01(火)県要請3校合同学校訪問[公開授業4クラス・合同研修会]

 06・04(金)模範授業[中学校の部](松丸春生先生)

 06・10(木)橋本市教育委員学校訪問[『国語力向上モデル事業』研究推進報告]

 06・17(木)定例学校訪問[公開授業6クラス・研究授業・研究協議]

 07・16(金)生徒意識実態調査[コミュニケーションセンスチェック(全学年)]

 08・09(月)県要請学校訪問

 11・09(火)3校合同『国語力向上モデル事業』研究発表大会開催

11・18(木)「NHK総合」にて研究紹介放映

11・26(金)第35回「博報賞」授賞式出席

12・08(水)「テレビ和歌山」にて研究紹介放映

12・14(火)文部科学省学校訪問

※ 3校研究推進委員会を定期的に開催

   校内企画委員会・研究部会・職員会議・現職教育等を開催

<話すための原稿づくり>

        『研究紀要』(残少々)・『研究実践集録CD』があります。

研究に関するお問い合わせは、直接本校へご連絡ください。

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